ネタ










1575回めの キス を


by ***

その言葉の前に会いましょう

やっぱ泣いたってバレバレ?
偽るなら美しく
抑え切れない熱情と建て前の愛してる
眠る君に秘密の愛を
あの夢の終着駅で
逃げられないって、分かってる。逃げられない。
はやくここに来て、はやく抱きしめて
酔ったふりするから、家まで送るふりをして。
「恋をしてる」と笑顔で言う君、僕には残酷だったよ
夜明けの前には迎えいくよ
恋ごころよ君がいとおしい
いまだけは甘えさせて
この痛みすら愛しくて
「特別」だけど「一番」じゃない。そうだろ?
こんなに誰かを愛しいと思ったのは初めてだった。正直、初恋だった。
一年前から相思相愛
夕焼けはときどき優しい
理由なんてねぇよ、抱き締めたいんだ
「耳元で好きって言ってよ」
目を見ないで、好きと言ってよ
あの恋が追いかけてくる
それは誰のことなの?
君の恋を上書きしてやる
ブレーキなんてとっくに壊してしまった
ためらいがちに握り返した
好きだから、ぐちゃぐちゃにされました
遊びじゃないならもうキスしないで
ひと夏の恋を永遠の愛にする方法
恋は人を狂わせると言うが、まさにその通り
あきらめのキスをして、後悔の夜に泣く
初恋はまだ消えてくれない、らしい
確かなことはたったひとつ、君が好き君が、好き
何も残してなんかいかないで
デレ待ちなう
心までは奪えない
ああ、もっと人を見る目が欲しい。
言ってくんねぇとどうしたらいいか分かんないって
ごめん、諦めないよ
ほら、もう、あなたが、足りない
片思いでもしあわせだった、あの頃に戻りたいよ
無垢な誘惑者
せいいっぱいの色香であの人をたぶらかすのです
ハッピーエンドにあこがれて、バッドエンドの夢を見る
消え行く恋の繋ぎ止めかた
守られるよりも共に戦いたくて
簡単に忘れられるなら、恋なんてしない
ときどき、好きになりすぎてる。ダメだよ、わたし、これ以上。
背中にキス
このメールはエラーで届きませんように。願いながらボタンを押した。
悩んで、別れて、また手を繋いだ。本当の終わりはもっとあっさりとしているはずだから。
確かに恋だった
手に入らないと思うと渇きが酷くなった
先に切るのがもったいなくて、君が切るのを待ってたの
慌てて冗談に変えた
あなたがいない、夏がくる
穏やかに長く愛すること
聞こえないように耳をふさいでいたのに力ずくで自由を奪われて「好きだよ」って言われた。悔しい。
気の済むまでキスして
他の何を捨ててでも来て欲しい
絡めた指が愛になる
あなたの隣で笑うのは私
不安定で無粋で堪らなく愛しい
いつも別れを見つめて
君以外の誰かなんていない
その背中で泣かせてくれたら
甘い痺れが支配する
ありがとバイバイ大好き!
出会いの夏、別れの秋
俺じゃ駄目なんだ?
君の恋を上書きしてやる
この熱は誰のせい?
いらないのなら俺が貰いますね。あ、これ、事後報告ですけど。
キス魔だから。
ほしいのは心
そうやって期待させて、酷いひと
愛されているような気がした
そっとかけよって、あなたの腕にからませて
そんな俺が好きなくせに
好きって認めたら、キスしてくれますか?
今の僕を支えるのは君の歌
そのまま、そこにいてください。僕は寒がりなんです。
辛い、この恋を辞められない、好きです
男女の友情を成立させると、私の恋が成立しない
貴方の前でも、うまく笑えるようになった
私は強くはない。ただ弱くはないだけ。
触れ合う熱でしか愛を信じられなくなって
どうしてそんな顔で、声で、瞳で
遠回りのハッピーエンド
意外と安い女かも
瞳の奥に恋が、揺らめく
隠し通したご褒美を
きみの体温が高いのは、
乙女的願望
なみだ色の海に溺れた
「絶対に忘れられない」と思っていた。今は忘れてゆくことに怯えている。
どうしよう隠し切れない
こんな、世間では「セフレ」と呼ばれるような関係
ごめん、手が滑った、忘れて
やがて来る変えられない結末
ライクなのか、ラブなのか
それは誰のこと?
どうしよう君がほしい
37℃の恋人
僕は、指先だけで、甘い熱をなぞった
見にくい嫉妬ごと息絶えてしまえばいい
ほんとうはぜんぶ、うそだったよ
何だ、誘ってたのか?
気付けばまた君のこと考えてる
待ってなんかやらない
明日になれば、忘れてしまえるけど、きっと夜は、明けない
泣き顔、みた?
まだ私のこと好きですか
くちびるから感染する恋の病
本気だったって気付かないで
嫌い嫌い嫌い好き嫌い
あの恋が追いかけてくる
特別じゃないって言い聞かせてみても、幸せな気持ちは消えやしない
恋心に100のダメージ!
キスはさよならを飲み込んで
もうやめたい、好きでいるの、辛い
君となら二人、何度でも恋したい
甘い痺れが支配する
最後の泣き落とし
関係ないと言われて遠ざけられるのがどんなに辛いか、知っていますか

Je n'aime que toi. 愛しているのは、あなただけ
・Amour transparent 透明な、恋
・L'affection devient bientot heureuse. 慈しみはやがて、しあわせになる。
・De cheveux a une pointe des pieds 髪の毛からつま先まで
・Le plus heureux du monde この世で一番しあわせ
・Une  toile blanche br le. しろい星が燃える
・La douleur  mouss e d'un premier amour はつ恋の鈍い痛み
・La forme de l'amour en haut lequel se niche 寄り添う愛の形
・  chacun de mots 言葉の、ひとつひとつに
・Jusqu'au jour qui obtient tout すべてを手に入れるその日まで
・Pendant que je regarde un oiseau voler 鳥が飛んでいくのを眺めながら
・Je ne peux pas attendre en plus もう待てない
・Je marche le pleur 泣きながら歩く
・Mes chaussures   hauts talons ne conviennent pas   moi. ハイヒールは似合わない
・Depuis que vous  tiez trop brillant きみが、あまりに眩しすぎたから
・Les fleurs sont laiss es   la neige 花散らす雪
・Nous voulions  tre comme amis いっそ、トモダチならよかったのに
・Le r ve qui n'est pas toujours capable d'accomplir 叶わない夢ばかり、いつも
・Vous n' tes pas ici あなたがいない
・Je vais bien だいじょうぶ
・一目惚れして欲しい 会うたびに 何度でも
・縛られたくなくて 離されたくなくて
・モテる人間って羨ましい 愛される人間って尊敬する
・試着室で思い出したら、本気の恋だと思う
・たったひとつの恋が欲しくて どれどけ涙を流しただろう
・似合ってるから、脱がせたくなる
・いつまでも愛し合って 何度でも恋に落ちる。
・あなたといたい、とひとりで平気、をいったりきたり

・私なんかを好きにならないあなたが好き
・誰にでも優しいあなたが嫌いで、
誰にでも優しいあなたが好きです。

【ただの、夢だよ。】
「もしもし?…その話ならもう終わったじゃん。汐里に対する態度を改めない限り香奈子も麻有子も連れていかないって。」

「…ん、大伍、どこ行ってたの…?」
さも今起きました、みたいな雰囲気を出していると、大伍が目を細めて、いつもみたいに優しく笑って。
「トイレに行ってただけだから。起こした?ごめんな。」
「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」

電話を切ったのを見て、 慌てて寝たふりする私 寝室に戻った旦那に、白々しく 「どこいってたの?」 と今起きたようにしてみた そしたら旦那、優しい顔で 「トイレに行ってただけだよ」と返す 私、もう惚れ直しまくり

本当はただたださわりたくて、キスしたくて、抱きたくて、少しでも近くに行きたくてたまらなくて一方的にでもなんでも、涙がでるほどしたくて、今すぐ、その人とだけ、その人じゃなければ嫌だ。それが恋だった。思い出した。 by 吉本ばなな「とかげ」

by ***

先生が自習だと言って教室を出ていった瞬間に騒がしくなる教室。

かち、と
「…なあに?」
首を少し傾けたせいでふわりと髪が揺れる。長い睫毛の間から
「いや、解くの早いなーと思ってさ。」
「間違ってると思うけどね。」
「またまた〜。土居さん、校内テストで上の方だって聞いたことあるよ。」

「志望校とか、決めた?」
「××くんは?」
「質問を質問で返すのってずりぃー。」
ふふ、と
「俺は千葉方面かな〜って。あくまで予定だけど。で、土居さんは?」
「都内にしようかな、どうしようかな〜って思ってるよ。」
「え、」
「?」
「いや、何となく、すげー失礼かもだけど、土居さんは都内の大学っぽいからさ。」
「そう?」
「あくまでイメージだけどね。女子大とか。」
「都内じゃなかったらどこ?」

 、 、 、

「…え?」
耳に届いた言葉が、まるでしゃぼん玉のようにぱちりと消える。聞き間違いかと思ってしまうほど。え、聞き間違い?

初期
「すみません、虹村くんいますか?」
「あ、ああ、いるよ。おーい、虹村ァ。」
「あン?ああ、どうした?」
「今日のメニューなんだけど……」

「今のバスケ部のマネージャー!?めっちゃ美人じゃん!」
「そーそー。男も顔負けするほど男前だけどな?」

中期
「すみません、」
「あ、虹村に用?」
「は「おーい、虹村ー!マネさん来てるぞー。」
「どうした?」
「灰崎が……」

終盤
「あ、」
「虹村〜、奥さん来てるぞ〜!」
「あれ、今日は奥さん来たの?」
「…!?」
「旦那さん今来るからね!」
「いやあの、」
「どうした?」
「よっ、虹村夫婦。珍しいな、嫁さんが来てるのか。」
「おー。んで?」
「監督がお昼休みに職員室集合って。」
「虹村〜こんな美人な奥さんいるんだから浮気すんなよ!」
「うっせ、さっさと行けよ。」
「…!?」

※稀に「嫁さん来てっから邪魔すんな」
「奥さんと話してるから後で」とかってノってたら可愛い…


「お前、何で分かって…?」
「……!」
サァ、と血の気が引いた。
『悟られてはいけないよ…悟られたら、お前はーー』

「未来が変わらない前提で、15歳の私が望みたいことって何?」
「………一緒に、」
「一緒に、高校生活してみたかった……」
だよねえ、と口には出さず、幼い自分を抱き締める。困らせるから、言わない方が良いこともある。

「土居先輩!」
「どうしたの?」
「灰崎が………!」

「灰崎、」
「アァ!?ンだよ!!」
「私にはいくら迷惑かけたっていい。アンタが他人様に迷惑かけるなら殴ってでも止めに行くし、一緒に謝りに行く。でも、キャプテンやチームには迷惑かけんな。」
ほら、帰るよ、と
「離せよッ!」
「帰って説教してもらわないと。」

「灰崎連れて帰りましたー。ハイ、挨拶。」

「手間かけさせたな。」
「いいえ。椎名、桃井、ありがとう。交代する。」

「離せよブス!!」
「ほお…?お前はいつからそんな態度を取れるようになったんだ?」
****
「由季ちゃん!まだ離れちゃーー」
「、え?」
『ヤ ク ソ ク ノ ジ カ ン』
とぷん、と土居の姿が床に吸い込まれて消えた。

「ア、イ、ツ、は〜〜〜!オイ、赤司ィ!」
「捜しています。……いました。」

「何が『神の御子』だ。アイツを体よく縛り付けてるだけじゃねェか。」
反吐が出る、と吐き捨てた虹村は、

傷口にふう、と息を吹きかけるとみるみる内に血が止まった。ごろごろと擦り寄ってくるのを自由にさせていたら、俺の右手をとって、両手の中で遊んでいる。
「落ち着いたら寝とけ。30分くらいしたら移動する。」
「ん。」
ぎゅ、と握ると目を閉じた。抱え直すと、
by ***

めんつゆ 9/26
by ***

?オリジナルラブを貫いて


「オファー?」

掃除機をかけている手を止めて聞き返すと、そー、とソファの向こう側から返ってきた。ふわっとしている髪と長い足しかこちらからは見えない。

「何処から?」

「神戸。」

「ふーん。」

神戸ねえ、と内心繰り返す。そう言えば、夢生は高校は兵庫やったような…とぼんやりとした記憶を探りつつ、床を磨くために、専用のシートを道具に付けた。

「興味なし?」

「人の人生の選択がかかってんのに、軽率に口、挟めるわけないやろ。」

綺麗になっていく床から、芳香剤のいい香りが鼻を擽る。
つやつやと光る床を見るのが好きだ。

「俺が神戸行きたいって言ったらどうする?」

「別に?どうもせんよ。」

好きにしなよ、と言うと冷たー、と不満の声が上がる。ほな、どうしろ言うの。

「付いてこいって言うなら付いていくし、待てって言うなら待つし。」

夢生次第とちゃうの?
何を今さら。

あー、今日の晩御飯の何にしよ。ガッツリお肉はお腹に溜まりそうやな、んー。

ひょこ、と背もたれから顔を覗かせる。

「どっちを選ぶにせよ、けじめはちゃんとせなあかんよ。」

それこそ失礼やで、と言って。

「分かっとる。」

ぱちりと目が合ったけど、確信した。

人には聞いてくるクセして、全然揺れてないやんな?
全く、思わせ振りかー!

神戸さんやって、振り回してるんか、振り回されてるんか。

どっちか分からんねえ。

「今日の晩御飯、中華系でええ?」

「えー、和食〜。」

駄々をこねる大の男(28)を横目に、和食なあ…と献立をぼんやり考えている自分がおる。

「しょうがないなあ、和食にしようかな。」

「ウェーイ。」

「そん代わり勝ってきてよー。」

「ういー、買ってくるわ神戸牛。」

「その買うじゃないんですが?」

呆れつつも、結局は。


アウェイ神戸戦。
家でハイボールを片手にちびちびとやりつつ試合を観る。




『このピッチで勝たなければならない理由があった。』


自らの得点で勝ちをもぎ取ったこの人に、
普段ははぐらかす言葉に熱さを垣間見せるこの人に、


『鹿島で三冠獲る』


ーーーずっと魅せられている。


***
290817
back ground music by 『ヒトリノ夜』ポルノグラフィティ

残暑お見舞い申し上げます。
仕事に忙殺されそうになりながらも何とかぽつぽつと現地に観に行っております。鹿島たーのしー!
ふと気付くとお気に入り登録等して下さる方が増えていて、有り難いやら恐れ多いやらです。

本日鹿嶋にいらっしゃったとか。御大に一目お会いしたかったです。残念。
by ***

「Some more!(もっとちょうだい!)」

「翔太、ワンオンワンしよっか。」
「ほんと!?」
「3本勝負ね。勝った方が今日の晩御飯の選択権あり。」
「メニューは?」
「和風オムライスか、ハンバーグかな〜。ちなみにハンバーグのソースはデミグラスかおろしポン酢です。」
「っしゃ!!」


「んー……。」
「翔太、帰るよ。」
「ねえちゃん、だっこ……。」
「ええー…しょうがないなぁ…。」
よっこいせ、と
「土居、貸せ。」
「え、いいよ、虹村くん。疲れてるでしょ。」
「いーから。よっ、と。」


「ん?あー、大丈夫、大丈夫。人よりちょっと長く記憶に残るくらいだから。匂いとかは残らないし、問題ないよ。」
「言い出しっぺの法則。そっちは私が行く。」


「……う……。」
幼馴染から貰ったお守りを持っていても連れてこられたということは、相当の恨みを買ったらしい。ふ、と口許を緩めつつ、スカートのポケットに手を入れると、かさりとお守りに手が当たった。
『必ず持っていてね。由季ちゃんを守ってくれるから。』
ーーうん、玲央。
死ね、呪ってやる、と怨嗟の声が延々と続くなか、赤く染まった空を見ながら廊下を歩く。」


ざっと読んできた。黒、余計なこと言ってんじゃねえよ。
冬がちょっと混乱してな。
>>混乱?
自分の過去の記憶と、霊の記憶が混在したせいで、混乱したんだよ。だから俺と実で宥めてた。
>>冬大丈夫か?
>>冬可哀相…(´;ω;`)
冬先輩の取り乱した姿を見たのは初めてでした。僕たちが冬先輩を傷つけたんです…
>>黒 お前たちが自分を責めると、冬が余計に気にする 分かるな?
>>虹 はい… 
>>記憶が混在するってどんな感じなんだ?kwsk
「やだ、ねえ、どうして、緑、桃、おかあさ、痛い、痛いよぉ…!」
「先生、せんせい、が、だって、大丈夫って、青(下の名前)が、赤、目、目が、」
「離して!離してよ!おとうさん、叩かないでぇ…!黒、黄、ごめん、みんな、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
>>うわ、これは辛い……
>>冬(´;ω;`)
今は寝かしつけたからな 休んでりゃ治る、一時的なモンだ
>>とか言いつつ心配してるクセに〜
>>うるせえ
冬ちゃんなら私の膝で寝てるわよ


スマートフォンが震動した。
『悪い、そっち行けなくなった。』
ーーああ、やっぱり。
何となくそうじゃないかなと思っていたけど、やっぱり実際知らされると。
気にしないで、と返信して、テーブルの片付けに取り掛かる。
彼の分は一応ラップをして冷蔵庫に入れておく。きっと明日はこちらに寄るはずだから。
昨日ので申し訳ないけど、要らなかったら捨ててね、と書き置きを残して、帰る支度をした。
外は寒いだろう。コートの前を合わせて、パンプスのストラップを留めた。
……そっと目を伏せる。
今日で、6年目、だった。

「最近、会ってないから、どうかな。」
「…なあに?喧嘩?」
珍しいわね、と続けると、由季ちゃんは首を振った。
「ううん、何だろう…こう、タイミングが合わなくって。」
そういうときってあるよねえ、と困ったように笑う彼女は、どことなく寂しそうに見えた。


「あの…修ちゃん。今度の休みの日って、会える?」
『あー……悪ィ。航太が試合だから連れてってやんねーと。』
「ん……そっか。」
『また、いつだって、会えるから。』
ーーぱきり、と何かが割れる音がした。
「…………そう、だね…。」
ねえ、玲央ちゃん。やっぱり、私が我儘なんか言っちゃ駄目なんだよ。
『由季ちゃんは望んじゃ駄目なんだよ。』
……ああ、あの子の声が、こだまする。
『由季?』
「…ううん、何でもないよ。」


祈るように指輪をなぞる。
卒業する時に、貰ったもの。
いつか、本物を渡すからーー。
そう言われて、本当に、本当に、死ぬほど嬉しかった。
ずっと好きだった相手に、好いてもらっていることが、夢のようだった。
そんな、普通の女の子みたいなことを思っていたの。
嗤いますか?


最近声聞いたの、何時だ?
笑った顔見たの、何時が最後だ?

『何でもないよ。』
耳に残っているのは、何かを悟らせまいとした穏やかな、優しい声。
会えないかと尋ねてきたアイツに、会えないとことわったきり、そのまま。
俺は甘えすぎていたんだ、アイツに。


呼吸は、出来てるだろうか。
ーー網膜に焼き付けるかのように、その瞬間が、スローモーションで目に映る。
『次の休み、用事があってさ。だから、会えない。…ごめんな。』
ハイブランドのジュエリーショップの店内で、修ちゃんが笑っていて。その隣には、綺麗な女性がいた。ショートカットの、華奢な人。二人とも私服で、店員さんも微笑ましそうに見ている。
……ああ、そういうことだったんだ。
すとん、と納得がいった。
最近素っ気なかったことも、会おうとしなかったことも、辻褄が合う。

気付いたら、アパートに戻ってきていた。
パンプスを脱ぎ捨てて、ふらふらと寝室に向かう。荷物、集めなきゃ。元々他人様の家に物を置くことが苦手だっだから、それほど大荷物にはならないだろう。楽しそうに笑う姿が脳内でリフレインする。
修ちゃん、嬉しそうだった。
最近、笑った顔見てなかったな…。
「……そっか……。」
きっと私とは違うひと。
明るくて、優しくて、我儘を言わない、そんな、向日葵のような。
「……っ、」
ーーああ、好きだったな。
出会ってから今まで、思い出さない日なんて無かった。
ぽたりと、床に滴が落ちた。
初恋は上手くいかないと言うけれど。
こんな、終わり方をするくらいなら、ーーー
「……ぁ、あぁあ……っ!」


「椎名、桃井、ドリンクとタオルとスコアお願い。灰崎捕まえてくるから。」
「「はいっ!」」
「監督、何かあれば電話します。」
「ああ。」
「頼んだ、土居。」
「はーい。」

「すみません、遅くなりました。」
「「「灰崎、顔ヒデェ……!」」」
「こっの…ブス!離せボケ!」
「テメェは誰に物言ってんだ?アァ?」

「俺や赤司たちにバスケを叩き込んだのは土居だからな。」
「青峰のフォームレスシュートも原型は土居のもんだし、緑間の超弾道3Pシュートと黒子のミスディレクションもアイツの閃きから生まれてる。」
「バスケの神様ってのがいるなら、アイツは愛され過ぎたんだ。愛され過ぎたが故に、満足してしまった。人間は満足すると成長は望めない。そこをアイツも理解してた。」
「アイツが俺の世話係だったからだよ。」

「食べ盛りの弟が待ってるんだけど。」

「(胸にごろごろ擦り寄る)」
「(頭撫でつつスマホ操作)」
「(胸にごろごろ擦り寄る)」
「由季、ちょっと止まれ。」
「?(言われた通りに止まる)」
「(抱き抱え直して背中を叩く)」
「(心地よくてうとうとし始める)」
「(背中を叩く)」
「(寝る)」

くぴくぴと飲んでぷは、と息をついた。梅酒美味しい。お酒美味しい。
「由季、飲みすぎだ。もう止めとけ。」
ええ、と不満を表に出すと、修ちゃんは私の手からグラスを抜き取って残りを飲み干した。私のお酒が……!
「飲むなら茶ァ飲め、茶。」
ぱき、とペットボトルの蓋を開けた修ちゃんが空になった私のグラスにお茶をなみなみと注ぎ込んだ。

@hideomi.doi
妹と、弟と。
【女性と少年の後姿】
#とても可愛い二人
#仲良しです
#二人ともしっかりしてる
#でもお兄ちゃん頼られたい

@***
仲良しですねー!

@***
背中からでも分かる、妹さん絶対美人

@***
お兄ちゃんかわいいww

@hideomi.doi
寝顔撮られてた。
【寝顔】
#多分妹か弟
#どっちだ…

@***
どっちだったんです?

@***
いたずらっ子さんww

@hideomi.doi
妹の手料理。旨い。
【手料理の数々】
#妹ご飯
#和食
#美味しい
#何でも作れる
#いくらでも食べられる
#弟も美味しいって
#お嫁に行くときお兄ちゃん絶対泣く

@hideomi.doi
家族旅行。
【後姿】
#父
#母
#妹
#弟
#俺
#仲良しです〜

@hideomi.doi
弟の成長が楽しみで仕方がない。
【少年の背中】
#もっと大きくなれ
#お前ならやれる
#お前の一番のファンだよ

@hideomi.doi
ご存知の通り、妹弟溺愛しています。可愛い。
【寝ている姿】
#仲良くお昼寝
#本当仲良し
#微笑ましい
#二人とも生まれたときから可愛かった
#起きたときのために晩御飯作ってくる

@hideomi.doi
いつも兄がお世話になっております。
【笑顔】
#お兄ちゃん大好き
#いつもありがとう
by ***

?砂糖を一匙

「修ちゃーん!」
早く、と満面の笑みで急かす彼女が眩しい。アメリカから帰ってきて2年、付き合って半年。
「走ると転けんぞ。」
「転けませんー。」
中学の頃から綺麗だと思ってはいたが、見ない間に女ってのはより磨きがかかるもんだな、と一人ごちる。
半袖のストライプシャツにデニム生地のパンツ、足先の開いたサンダル。
「うっわ、今の子見た?チョーカワイイ。」
「マジ?…おー、マジだ、読者モデルとかにいそー。」
「声かけてみっか?」
たまたま耳に入った男連中の言葉にはん、と鼻で笑う。
「修ちゃん?」
不思議に思ったのか、戻ってきた#name2#に、尻尾が見えるよう。薬指に指輪が光る右手を掴んで口許を緩める。
「ったく、ふらふらすんな。行くぞ。」
by ***

?運命も望みも夢も

サッカーが、好きだった。

父親の影響もあり、物心ついた頃にはもうボールに触れていて、蹴って遊んでいた。

勝ったら嬉しいし、負けたら悔しい。
昨日出来なかったことが今日出来るようになってると楽しくて、自分に出来ないことを誰かがやっていたら、直ぐ様負けん気が顔を覗かせていた。

ーーそれが、楽しいだけで出来なくなったのは、いつだったか。

好きなことで、メシを食っていけたらどんなにか楽しいだろう。

その考えを嘲笑うかのように、現実はキツくて。

高1、高2と2軍で、試合に出る以前の問題だった。でも、高2の終わりに少しずつ試合に出れるようになった。


その矢先のことだった。

『お父さん、大伍くんはトップには上げることはできないので、進学を考えてください。 』

親父が泣いてる姿を見かけたことがある。

高校生活を1年以上残しての通告。

親父は諦めるな、と俺に言った。

地道な積み重ね。
芽が出るかは分からない。
芽が出ても花が咲くかは、実が実るかは分からない。

誰にも分からない。ーー自分自身にも。

暗闇が背後で口を開けて待っている。
ーーいいじゃないか、もう。
ーー頑張ったよ。
ーー皆が皆、報われる訳じゃないさ。

お前、一人だけじゃない。



信じてやるしかない。


心が全部、黒で塗り潰されるような、苦い思い。


長い階段を黙々とリフティングしながら何度も登った。



そんな泥だらけの、それでも必死にもがいていたあの頃の自分を、後ろから見つめる。


もう少しだ、あと少し。

吹っ切れる時が来るから。


そしたらもっとーーサッカーを好きになってる。


そうして、その先で出逢えた人に感謝して、大切にして、学んでーー


ただ一人、欲しいと思った人を手放さないように。


□■□


白い天井が目に入った。

遠くで蝉の声が聞こえる。

ーーああ、夏か。

試しに指を動かしてみたら、何のことはない。動いた。

暑すぎず、寒すぎない温度は、絶妙な温度設定の空調。

「大伍?大丈夫?」

洗濯物を取り込んできたらしい(名前)が少し離れて俺の顔を伺う。

ひらりと手を振ると、コップに水を入れて持ってきてくれた。

起き上がって、コップを受け取り、水で喉を潤す。
壁にかけてある時計を見ると、最後に時間を確認してからそれほど経っていなかった。

「はー…………昔の夢見てたわ。」

やや間があって珍しいね、と(名前)が穏やかな口調で喋った。

「プロになる前の頃だったんだけど…懐かしいもんだな。」

近くに座った(名前)の膝の上に頭を乗せる。

「楽しい?サッカー。」

(名前)の耳にかけていた髪が数房零れる。

それを再度耳にかけてやりながら、ああ、綺麗だと思う。

欲張りだから、叶えられるものは、全部叶えたい。

一度しかない人生で、欲しいもんは全部欲しがらないと損でしょ。


「すげー楽しい。」


***
290724
手に入れてナンボでしょ。
title:サンタナインの街角で
by ***

?浅葱 七瀬
・藍沢たちとは同期。2年前にNGOの医療スタッフとしてアフリカに飛んでいた
・専門は消化器外科
・母子家庭だったが、事故に遭った母を医療事故で失う
・情に厚い
・白石と同じく暇があれば医学書や論文を読み漁っている


?柳谷 航生
・浅葱とは高校の同級生。腐れ縁。
・東都大学病院からスタンフォード大学へレジデントというキャリア持ち。1年前から翔陽大学附属北部病院救命救急センター に赴任
・心臓血管外科のエース。
・母を早くに亡くし、父子家庭だったが、医師の父を事故で亡くす。(浅葱母と同じ事故現場)
・人当たりもよく穏やか、頭の回転も早く、医師としての腕も容姿も良いと絵に描いたような完璧無比さだが、浅葱にだけは「甘さを一身に注いでいる」と評されるほど。

「心外にコンサル頼んで!」

「ーー珍しいな。呼ばれるなんて。」

「ーー助かった。」
ふ、と口許を緩めて、
「頂こうかな。」

藍沢先生だったか、と柳谷は呟いた。
「良い先生だ。心外にいたら危なかったな。」
いなくて良かった、と言わないところと、実際藍沢がいたとしても、飄々としている様子が思い浮かぶところが、可愛くないところだ。

「何で、こっちに来たの?」
「ん?うーん、」
「私の顔を見るためとかだったら殴るから。」
「はは、手厳しいな。半分正解、半分不正解ってとこ。」

「別にどこの病院で医者やっててもいいんだ。浅葱七瀬がいるならなんだって構わない。子どもを作らなくても、結婚もしなくてもいい。ただ、俺は君の最初で最後の男になりたい。」

「浅葱ですか?高校・大学の同級生なんです。」
腐れ縁なんですよーーーと、

「柳谷は高校・大学の同級生なの。」

「ねむい……。」
「当直馬鹿みたいに入れてるからだよ。病院に近いから俺の家で寝な。」
「シャワーはさすがに一人で浴びてね。妙齢の女性と入れるほど人間出来てないから。」
「んー…。」
「はい、髪乾いたよ。寝よう。」
「やすみ…。」
「はいはい、おやすみ。」

「お腹すいたー…。」
「うだうだしないで、顔洗っておいで。朝御飯用意しとくから。」
「ん〜…。」
「背中でぐりぐりしない。」

「謝礼はこれで良いよ。」
とんとん、と
白衣の襟元を握り締め、少し背伸びをして唇を重ねた。
ーーよく関係を聞かれるけど、いつも答えに窮する。

身体だけの関係というには遠く、同僚というには近い
by ***

?幸せって一瞬で、たぶん、そこがいいの(Yuuma)

潮の香り。

水の中から見る世界が好きだ。
潜っては上を向いて、キラキラと光が反射する水面を見つめる。

顔が水面から出るか出ないかくらいの浅瀬で、底まで潜って意味もなく砂に手を入れてみたり、漂うワカメを掴んだり、小魚の後を追いかけたり。

あー、楽しいなあ。

ぷは、と浮上して海から一度出ると、名前を呼ばれた。

「これ、被って。」

「浮き輪だ。」

優磨くんからすっぽりと被せられたのは水色の大きな浮き輪。

「引っ張るから。」

大きくなった背中を見ながら後ろをついていく。
二の腕から先は日焼けしてるけど、胴体部分はまだ白いの、今日一日で色変わるかなあ?なんて思いながら。

すいすいと優磨くんに紐で引かれながら海を漂う。

「楽ちん〜。」

良い思いを享受しているとぐん、と紐を引っ張られて遠投のように動かされる。(と言っても水の中だからかなりゆっくりだけど。)

「ちょっとー。」

と非難の声を上げるもケラケラと優磨くんは笑う。

「良いトレーニングになりそうだね?」

へらりと笑うと確かにと優磨くんも頷く。




陽も落ちるころ。

お客さんも少なくなってきて、私たちも簡易シャワーで軽く身体を洗い流して、旅館のお風呂に入りに帰ろうと話していたところだ。

海にはいろんな顔がある。

優しいときも、激しいときも。

その波に、上手く乗れたら。


「(名前)、帰るぞー。」

「うん。」

今年新調したシルバーのアンクルストラップのサンダル。

細かいラメの入ったネイビーのペディキュアがつるんと輝く。

脱いで、もう一度足だけ海水に浸かる。

「(名前)ー。」

「はーあーいー。」

振り返って水気持ちいいよー、と言うと知ってる、さっき入ったから、と躱されてブーイング。


「ゆーまくん!」

ポケットに手を突っ込んで、太陽の光に当てられて、日に焼けた顔で笑うあなたは、夏が似合う。

「また来ようね。」

「おう。」


またしばらくは、こんなゆっくりした時間も取れないから。

私はどこにでもいる、ただのOL。
サッカーも最近観始めたからルールとか分からないことも沢山ある、でも応援は楽しい。
休みの日はあんまり被らないから、たまにご飯に行くくらい。

お互いのペースを横目で合わせて、せーの、で、第一歩を踏み出す感じ。


でもきっと、たぶん、不確かで、足元が少し揺れているくらいが、今の私にはちょうどいい。


今しか楽しめないもの。



***
290717
折角の三連休に体調を崩した人間です_(:3」∠)_ しょんぼり…
タイトルは好きな歌手さんの歌から。
by ***

?瞳の奥に恋が、揺らめく

「汐里ー。」

「ん、ん…っ!?」

テレビを見ていたら名前を呼ばれたので振り向くと、視線がぶつかった。

そしてそのまま後頭部に手を回されて唇を奪われる。
刹那の出来事に大伍の瞳の中に映る私は間の抜けた顔をしていた。

「ちゅーされて驚いたよな?」

当の本人は悪戯が成功した子どものごとく、満足げに笑んで、よしよしと私の頭を撫でる。

「足りなかった?」

「えっ。」

「指。口元。触ってた。」

ちょんちょん、と口許を指されて、顔に熱が集まる。

「いや…も、 勿体ないから、」

勿体ないって、と目を細めた大伍。

だって勿体ない。

肩口に額を押し付けると、耳朶を軽く食まれて、びくりと身体が跳ねた。

「うさぎみたいな、ホント…。」

ちゅ、ちゅ、と角度を何度か変えて、唇が触れる。

「ふ……っ、」
by ***

?Honey Bunny

「あれ、(名前)ちゃん?」

半休を取った仕事帰りにスーパーに寄って、今日の晩御飯は何にしようかなーと思いながら野菜の値段を見比べていると、声をかけられた。

「西さん。」

こんにちは、と挨拶すると、人好きしそうな笑顔を浮かべてちわ、と返してくれた。

「今日は午前練習ですか?」

「そ。」

そうですか、と相槌を打って、右手に持っていた長葱をカゴに入れた。

「夢生と喧嘩してんだって?」

久々に耳にした名前に、顔を西さんの方に向けた。

「そう言ったんですか?あの人。」

「いや、優磨が騒いでたから。」

聞けば、優磨くんが、暫く私の姿を見ていない?もしや……??本人に確認すると渋々というか、非常に歯切れが悪いものの喧嘩してる、といったニュアンスの返答があった、らしい。

「で、どーなの、そこんとこ。」

ストレートな質問(この辺り夢生と似てるなあと思う)、苦笑いしながら喧嘩では無いですよ、多分、と答える。

「ちょっと言い合いになって、反省中なう、です。」

「…それ喧嘩じゃね?」

やっぱり喧嘩になるのかな、うーんと考えていると、西さんがフォローしてくれた。

「別にそれが悪いって言ってるわけじゃないからね。むしろ夢生と(名前)ちゃんがそういう風になるの珍しいと思って。」

俺もだけど、夢生も自由人だから(名前)ちゃんがバランス取ってんでしょ、との指摘に何とも返せず流す。


ーー原因は、どうしてそういう態度をとるの、と注意したのが始まりだった。

試合は勝負事だ。熱くなるのは分かる。
でも試合は駆け引きでもある。押すところがあるなら、引き際というものもまた、ある。

C3、異議によるイエローカード。
夢生はそのプレースタイルから相手に厳しいマークをされることが多い。それを外そうとして、ファールを取られることがある。

確かにこちらからするとイエローカードじゃないのか、と思うものをファールで流されて、おかしいと思うときもある。

けど、それで判定に抗議した夢生にイエローカードを出されるのは悔しい。

夢生はいつだってサッカーに真摯で誠実なのに。

だから、抗議するなら、詰め寄るんじゃなくて、

「だからね、別に抗議が悪いって言ってるんじゃないんだよ。言い方の問題だよっていう話でーー」

「分かったって。」

「ちょっと夢生、」

「あーもう。(名前)に関係ないやろ。」

「ーーーそ、」

それを言われたら、




言葉が続かなくて、音にならずに、ぱくぱくと口だけが動いて、閉じた。

ーーねえ、夢生は、『関係ない』と言われて、遠ざけられることの辛さを、知ってる?

そう切り返されたら、私は『そう』と言うしかなくなる。

「…ごめん、言い方が悪かったかもしれない。今日は、帰るね。」

「…(名前)?」

「ねえ、夢生。しばらく間置かせて。」

「は?何で。」

「私が頭を冷やしたいの。夢生には『関係ない』でしょ。」




子どもの頃は、歳をとれば大人になれると、大人になっていくと思っていたのに。実際その歳になってみると、まだまだ自分だって子どもらしさが抜けない。

溜め息1つ。

カゴにいれたばかりの新鮮な長葱も落ち込んでいるように見えてしまう。

「でも、まあ、また近い内に会おうとは、思います。」

「男って面倒でしょ。カッコつけたがりだから。」

西さんもそうなんですか、ーーなんて野暮なことは聞かないけど。

「夢生も会いたがってると思うよ。」

「そうですかね?」

「だってアイツ末っ子気質だから。」

(名前)ちゃんに甘えてんじゃん、と口許を緩めて西さんは前髪を掻き上げる。



買い物を終えてスーパーの自動ドアを抜けると、雨独特の薫りがした。

深い土の匂い。
湿った空気が肌に触れる。

折り畳み傘を開いて、徒歩5分の我が家に帰っていく。

ぽつ、ぽつと、心許ない電灯の先にアパートが見える。

近づくにつれ、二階の中央辺りに人影が目に入ってきた。

……誰だろう。

そっとスマートフォンを取り出していつでも通報出来るように準備しておく。

私の足音に気付いたのか、その人影がこちらを振り向いた。
目を細め、姿を確認する、と。

「…夢生…!?」

慌てて階段を昇り2階へ向かう。
肩で息をしながら、通路を曲がるとそこにいたのは紛れもなく、その人で。

屋根があるから直接は濡れないとは言え、雨も降っているというのに、薄着で私が悲鳴を上げそうになる。

「ちょっと…っ!雨降ってるのに何してるの!早く中入って!」

合鍵は!?と自分の鞄に手を入れながら尋ねると忘れた、とのこと。こ の 人 は …!
玄関を開ける数秒も待ち遠しいほど焦って、開けたとほぼ同時に自分の荷物を玄関口の脇に置いた。

「風邪引いたらどうするの!すぐお風呂沸かすから、」

パンプスを脱ごうとして、ーー後ろから抱きすくめられた。

「ごめん。」

落とされた言葉に、思わず顔だけで相手を見上げた。

「え?」

「(名前)は俺のために言ってくれてんのに、関係ないとか言って、ごめん。」

「…そんなの、もう良いから。早くお風呂、」

「良くない。」

ぎゅう、と抱き締められる腕に力が籠る。

「許してくれる?」

しょんぼりとした言い方は本当に子どもみたいで、思わず笑いが零れる。

「何で笑うん?」

「ごめんごめん。許します。」

「じゃあ仲直りのちゅー。」

いつの間にやら身体を反転させられて

それとこれとは別では。
言おうとしたものの、それは、鼻にかかったような声に変わった。

甘い痺れが背筋を走る。

「一緒に風呂入ろ。」

ご満悦なのか首筋に顔を埋めてくる子どものような大人なこの人の、柔らかい髪を撫でながら、可愛いと思ってしまう私も、結局は。




***
290710
宇多田さんの新曲に癒されています。



宇多田ヒカル
大空で抱きしめて

晴れた日曜日の改札口は
誰かを待つ人たちで色づき始め
今日はどこか遠くへ行きたい気分
空の見える場所へ

雲の中 飛んでいけたら
大空で抱きしめて
君はまだ怒ってるかな
意地を張らずにいられなくて
いつの日かまた会えたとしたら
最後と言わずにキスをして
もし夢の中でしか会えないなら
朝まで私を抱きしめて

涙で目が覚めた月曜日の朝
急いで支度をした
僕はまだあの頃のまま
青空で待ち惚け
夏の花が散る頃には
笑顔で僕を迎えに来て

純なあなたが誤解するから
おしゃべりな私を黙らせて
傷ついたのはお互い様だから
四の五の言わずに抱き寄せて
いつの日かまた会えたとしたら
もう一度私を困らせて

もし夢の中でしか会えないなら
朝まで私を抱きしめて
わかっているわ、欲張りなのは
でも最後と言わずにキスをして
もし夢の中でしか会えないなら
天翔る星よ 消えないで
by ***

?モアザンワーズ

連日猛暑が続く。
熱帯夜になる日も多くて、水分補給と体温調整に気を配る。

起床予定時間より10分前。
スマホのアラームを止め、ベッドヘッドに置き反対方向に身体を返すと、(名前)が丸まって静かな寝息をたてている。

上下に揺れる姿を見ながらよく寝てくれるようになったと思う。
言ったら気にするだろうから、言わないけど。

半袖から伸びる細い腕に触れるとひんやりと冷たくて気持ちいい。
ああ、そういえば基礎体温低いもんな。

抱き寄せるように背中に腕を回すとううん、と唸り声が聞こえた。

「…だいご、あつい……。」

「起こした?」

「んー…。」

(名前)は何度か瞬きをすると、そのまま瞼を下ろして少し前に夏用に変えた掛け布団を引き寄せる。

長くなった髪をしばらくすいていると、覚醒したのか、(名前)が目を開けた。俺と一度目が合うと、何か言いたげに口許がむにむにと動く。

「…あの、大伍はさ…、」

「ん?」

「…ううん、何でもない。そろそろ起きようかな。」

朝御飯作るね、と起き出そうとした(名前)を捕まえる。

「…っ、びっくりした、」

「(名前)。朝飯食ったら散歩行こうぜ。」

「中二日で試合に出るんだから、少しでも体力温存しないと。」

「腹ごなしにウチの周りだけだって。」

「…もう。」

知らないからね、と不満そうに唇を尖らせる奥さんの頬をご機嫌取りに指の甲で擦った。

「今日は観に来んの?」

「ううん。」

「暑いもんな。観客数も多くなるみたいだし。」

「チケット完売だって。」

「お、マジか。また体調が良くなったら、だな。」

「気付いてたの?」

「水クセーじゃん。一緒に住んでんのに。」

にやにやと笑って、脇腹を軽くつつくと、つついた指を掴まれた。

「…気を付けます、」

罰が悪そうに小声で言うもんだから、思わず声を出して笑ってしまった。

ーだから、隠そうとしてもダメだって。



***
290709
お互いに寛容であって、半ば無意識的に甘やかしあっている姿を書こうと思ったのですが撃沈 _(:3」∠)_

タイトルをお借りした同曲の、「100の言葉より〜」の所がとても好きです。
by ***

遥夏、瀬名、和泉、千晶

まどか、と名前を呼ばれ肩越しに振り向く。
「一度しか言わねえぞ。」
桜の花弁が視界の隅で散っていく。
左腕を捉えられて、視界が
「嫁に来い。」
鼻を擽る香の薫り、瞬き二つ。
「返事は?」
焦れったそうに
「ーーは」
い、の言葉が音と成るか成らないか。
「……っ、ん、ぅ」
by ***

?今一緒にいたいんだけど、ダメ?


束の間の正月休み。

昼飯を終えて俺の部屋でゆっくりしていると、(人1)の身体が俺の方にもたれかなってきた。

ん?と隣を窺うと規則的な寝息が聞こえる。

旦那の実家なんてそりゃ気、使うよな。
…ありがとな。

コンコン、と控えめのノック。
桜子か?と思いつつどうぞーと声を抑えて返した。

聞こえたのかどうか、少し間を置いてゆっくりとドアが開いた。

そこにいたのは同い年の、従兄弟の博貴。

「あ、邪魔したか。」

いや?と寝ている(人1)に目をやるけど、起きる気配はない。

腰を下ろした博貴はお疲れさまだな、(人1)さんも、と言う。

「やっぱ気、使うだろうし。」

「だよな〜。高校の同級生の話とか聞いてたらさ、叔父さんたちも(名前)さんも上手くいってる方だと思うよ。」

「博貴も来年結婚すんだろ。」

「おう。やっとって感じだわ〜。まぁ、恋人期間が長かったのも楽しかったけど。」

「何個下だっけ?」

「6つ。」

「教え子だろ?駄目じゃん先生。」

高校で教師をしている博貴の彼女は元教え子で今年社会人1年目のはずだ。

「いやいや、手え出したの成人した後だから。ちゃんとそこは守ったし。」

落ち着いたら籍入れるつもりと話を聞いたのはそんなに前の話じゃない。

「一緒に住むようになって分かるんだけど、もうさぁ、めっちゃ可愛いだろ?」

ハイハイ、惚気ごちそーさんと流すと何だよー不満の声。

ん、と(人1)が音を溢した。

「…(名前)さんしっかりしてそうだもんな。」

じゃないとお前の嫁さんなんか務まんないわな、と博貴が笑う。

そりゃもう。

「価値観も合うし、メシも上手いし、身体の相性も抜群だし。」

指折り数えるとうわ、大伍ヤラシーと、ニヤつく博貴。

「惚気やがって。」

「そういう風に仕向けたろ。」

まぁなと言いつつ。

「お前が大事にしてんのは、見てたら分かるっつーの。」

じわりと肩から伝わる熱。

「さて、迎えに行くかな。」

「デート?」

「ドライブ。」

茶化すと言い直してくる辺り、まだ若いなーと思ったり。




階段を下りる音を聞き終えて。

「で、そろそろ起きる?」

頬に手を添えて目元をそっと親指でなぞると瞼が持ち上がる。

「…知ってたの、」

「熱くなってんの伝わってきた。」

「……本当に寝てたんだよ、」

「途中まで、な?」

鼻筋にキスを落とすと罰が悪そうに目をそらす(人1)。

「出掛ける?」

ふるふると首を振ったのを見て、

「じゃあ昼寝の続きするか。」

と、よっこいせとベッドに上がって横になった。

「おいで。」

ぽんぽんと空けた隣のスペースを叩く。

すっぽりと腕の中に収まる華奢な身体。

「あったけー。」

だいご、とくぐもった声が聞こえて、もぞもぞと腕の間から(人1)が顔を出す。

「ん?」

「お友達とか、会いに行かなくて良いの?」

折角のお休みなんだから、と。

会いたい人は、いる。

でもだからってそれに甘えて疎かにするような人間でもありたくない。

挨拶したかった人は回ったし。


「(人1)は俺といたくないの?」

「そ、ういうわけではないけど……。」

次の言葉を聞いた奥さんは更に顔を赤くして、唸って俺の肩に顔を埋めることになる。



***

title by 確かに恋だった
by ***

?桜流し
奴良 まどか
・高校2年生
・鯉伴の実娘、リクオの実姉
・一人暮らし中
・珱姫の能力を色濃く受け継いでいる
・空狐、八咫烏、白澤、獅子が守護している
・頭は良いが大学に行く気はない。卒業後は夜な夜なバーで流しをしている

 襟ぐりが大きく開いたシャツから黒のタンクトップがちらりと覗く。ボーイフレンドデニムの裾をロールアップさせて、足元は有名な星マークのアイボリー色のスニーカー。
「おはよー。」
「おはよー、#name2#ちゃん!」
「はざーす。」
「チッス。」
「うーす。」

「あーあー…ど〜も〜。ドラムのヨネです。」

「お?喋るの?珍しい。」
「4人とは…小学生からの付き合いです。この場に立たせてくれたのは4人の力です。」

「きっと、これが最後です。」



この世界にとって、きっと私は、邪魔でしかない。
父を救えず、弟に何もしてやれず、ただ命を消費する存在。

世界の隅を、お借りさせてください。


ああ、貴方に出逢えて良かった。
「有り難う御座いました。」
ーーさようなら。

何度も夢に最期を視ながら、悲しく辛く、酷く落ち込んだ時期もあったけれど。
自分を表現する方法を覚えて、仲の良い友人たちに囲まれて、恵まれているのだと思った。

心残りがあるとすれば。

恋を、知りたいと思った。
歌歌うものの、恋というものをしたことがなかった。
焦がれるような想いに出逢いたいと願った。

胸をかきむしられるような、激しいものではなかった。
穏やかで、少しずつ充たされていくような。
ああ、これが恋なのか。
けして結ばれぬ、実らぬものだと思いながら、それでも、酷くーー酷く、良い人だと思った。

いつかあの人に愛されるであろうひとが、羨ましく思えた。

「やっ、ぁ…っ、んん!」
「…学べよ、まどか。子は、何処で成すんだった?」
艶のある声を耳元で吹き込まれて
by ***

ただただ惨めで 不安で仕方なくって
この目も心も奪い取ってしまってよ 今すぐ
痛みの数だけ強くなれるっていうなら
あと何回泣けばいいんですか
よそ見厳禁見てててて ね?

泡になってしまえばいい
詠うみたいに泳ぎ続ける
すぐに燃え尽きる恋より ずっと愛しい君でいて
夢がいつかは終わるのなら 砕け散ったって構わない
もうすぐ夜明けが来る
夢の未来はここから始まる
悲しいことなんかすべて捨てて
最初で最後の約束
最後の笑顔がにじんで見えないの
行かないで 行かないで ここにいて
約束はいらない
100の言葉より伝えたいことがある
100の言葉より伝わると信じている
100の言葉より君だけを想っている
いつかってどれくらい?
呼吸だけで精一杯
優しすぎるところが逆に残酷って
私たちまた一つ年をとるね
願いをかけたあの日
どうしようもなく泣きたくなるよ
ずっと変わらないよと抱き締めて
ことばよりも抱き締めて
欲しいものがあるなら目をそらすな
今も忘れない約束
緩やかな風吹く町で
二度と君の手を離さない
いつかまたこの場所で
あの日と同じ 変わらない景色
散らざるときは戻らないけれど
君の全てになりたくて、なれなくて
たった1つの想い、貫く難しさの中で僕は
わたしの孤独が死んでしまう前に
赤い目をしたウサギは何も語らないまま
何も知らされないまま
降りやまない悲愴
幸せって一瞬で、たぶん、そこがいいの
あの日私たちが夢見たものを
口笛吹くような軽さで罪を背負った
あなたは私を虜にして置いてゆく
つづき@うちどめ by ***

?
時々足を運ぶ小さなカフェで、半ば無意識に耳朶のピアスを触りながら、汗をかいているアイスティーをストローで吸い上げる。かろん、と氷が音をたてて崩れた。今日の天気予報は曇り後雨。もう少ししたらあの黒い空から落ちてくるんだろう。そうなるとこの店も客足が賑わう。そっと目蓋を伏せた。
ーー昔話をしよう。

物心着いた時にはもうバスケに触れていた。幼い頃の私はバスケットボールの上に腹這いに乗っかって遊んでいたらしい。母がころころ笑って言っていた。ボールがつけるようになると、五つ上の兄によく近くの公園で相手をしてもらっていた。
「#name2#上手いな!きっとすぐ兄ちゃんも追い抜くぞ〜。」
暮れていくオレンジの陽を背に、兄はいつもそう言って私の頭をくしゃりと撫でた。それが嬉しくて、親が呼びに来るまで夢中になってボールを追いかけていた。兄が中学に上がり、部活に励むようになると、今度は五つ下の弟に今度は私が教える立場になっていった。
小学生になると私は地域のバスケットチームに参加した。チームを組み、練習をして、全国のチームを相手にする。楽しくて楽しくて仕方がなかった。

「中学では、選手として出ることはもう無いので。」
小学六年生に上がる少し前から、受けていた雑誌のインタビューで口にするようになった決まり文句。公式戦に出るのは小学生までで、中学生では外から見たいなあと高学年に上がる前に何となくそんな考え方になっていた。だからこそ最後のミニバスの全国大会で優勝したときは嬉しかったし、これで心残りはないと感じた。幾つかの中学校から誘いはあったけど全て断って、実家から近い帝光中学校に進学した。最初は部活に入る気もなくて、帰宅部で良いやと思ってた。弟の翔太が小学生になり、地域のバスケットチームに参加するようになって、練習相手にとせがまれていて、ちょうどいい気分転換にもなっていたから。

「バスケ部のマネージャー…ですか。」
五月のある日の放課後、帰ろうとしていたところを担任の白金先生に呼び止められた。そして提案されたことは。
「君ほどの腕を持つならば、マネージャーとしてもその力を発揮出来るだろう。」
「…私、マネージャー業、したことないですよ。」
男子バスケ部のマネージャーになってほしいということだった。実は帝光の女子バスケ部にも熱心に誘われていた。小学生の時の大会で見かけたことのある人にも声をかけられた。

普段は髪で隠れている両耳を見せた。透明なピアスがそこにはあった。

「」
手分けして荷物を運んだり、チームメイトにタオルやドリンクを渡したりするのは当たり前のこと。バスケはチームプレイだ。それを忘れるな。…口を酸っぱくしてお世話になった監督が言っていたことだ。
「構わない。私やコーチから指示をするから心配しなくて良い。」
白金先生は、すっと私に頭を下げた。大の大人が子ども相手にそんなことをするなんて。私は慌てた。
「先生…!止めてください、そんな…。」
「支えてくれないか。帝光中学校男子バスケットボール部を。そして一緒に立とう。全国の頂に。」
「……考えさせて、頂けませんか。」

そうは言ったものの、答えは決まっているようなものだった。例え選手でなくなっても、バスケは一番好きなスポーツだ。それに、念願だった、中からじゃなく外から見れること。
「」「」 「」「」「」「」「」「」「」 「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」
つづき@うちどめ by ***

「次の相手誠凛って聞いて、黒子っちが入ったの思い出したんで挨拶に来たんスよ。中学の時一番仲良かったしね!」
「フツーでしたけど。」
漫才か。
そう突っ込みながらもああこんな感じだったな、あの日までは、と思い出して小さく息を吐く。
『興味が湧いたら見に来なよ、バスケ部。』
退屈させないよ。
そう黄瀬に声をかけたのは私。こんなことになるとあのときの私が知っていたなら、

私は、

「せっかくの再会中ワリーな。けどせっかく来てアイサツだけもねーだろ。ちょっと相手してくれよ、イケメン君。」
ふと意識を戻すと、…思い出した、火神君(であってたはず)が黄瀬に勝負を申し込んだ。あーでもキミさっき…と黄瀬が呟いた。やっぱりこの展開。
「ねっ、#name1#センパイ。これ持っててくださいっス。」
こっちに近寄ってきた黄瀬に脱いだ制服の上着を渡されてこのまま捨ててやろうかと思う。(というか辺りにいる女子生徒に渡してもいいか。上着は戻ってこないかもだけど。)
「無理矢理連れてきたうえに荷物持ちさせるとは良い度胸してるじゃん黄瀬。」
分かってんだろうな?と言わんばかりに笑いかけるとひっ!と黄瀬が慄いた。覚えてろよ。
「よし、やろっか!いいもん見せてくれたお礼。」
黄瀬は火神君に向き直るとボールを突き始めた、ーー刹那。右を抜くと見せかけて素早い切り返しからの……同じく跳び上がった火神君を弾き飛ばしてダンク。うーわ、あの頃と断然キレが違う。これが伸びしろってか。
「ん〜これは…ちょっとな〜。こんな拍子抜けじゃ…挨拶だけじゃ帰れないスわ。やっぱ黒子っちください。」
黄瀬は黒子を真っ直ぐに見つめる。
「ウチおいでよ。また一緒にバスケやろう。」
「そんな風に言ってもらえるのは光栄です。丁重にお断りさせて頂きます。」
だよね。それにしても綺麗なお辞儀。手本に出来るくらい完璧。
「じゃあっ、#name1#センパイは!?」
ひらひらと掌を上下に振る。口で答えるまでもなく否。
「そもそもらしくねっスよ!勝つことが全てだったじゃん。なんでもっと強いトコ行かないの?」
ーー瞬間、息が詰まった。
あの人の言葉、後輩の苦しみ、土砂降りの雨、悲鳴のような自分の声。
どれも鮮明で、色褪せてくれなくて、米神を押さえた。
「あの時から考えが変わったんです。」
キミたちを、『キセキの世代』を倒すと。
目を細めて黒子を見つめる。前から男前だったけど、更に磨きがかかったかな。「冗談は苦手です。」
持たされた上着のポケットが震える。手を突っ込むと想像通り携帯があって、着信を表示していた。ボタンを押してそのまま耳に当てる。
「ーーはい。」
『黄瀬テメェ!どこにいる!?』
「あー、すみません。黄瀬くんなら喧嘩を売りに来てます。」
思わぬところで黄瀬への意趣返し。そんなに人間出来てませんから。アァ!?とあからさまな反応が返ってきて、少しスッキリした。
『…誰だ、アンタ。』
「うーん、黄瀬くんの携帯に勝手に出て怒られない関係?」
黙した彼方。はは、と笑って本人に変わりますね、と告げる。どうぞ、怒ってやってください。悪い子ではありませんが、元気が余りあり過ぎる子です。
「そこまで!」
「なんスか、センパ……いっ!?」
「お呼び出し。ハウスの時間だよ。」
表示されている通話相手の名前を見て、げっ、と黄瀬が言った。
電話に出ている黄瀬の背中を見ながら、(やや猫背になっている)さて私も撤収しようかなと凭れていた壁から身体を離して。
「#name1#先輩。」
声をかけられて肩越しに振り向く。
「久し振り、黒子。」
「誠凛だったんですね…。」
「うん、奇偶。」
びっくりしたよ、と笑いかける。
「帰ろうとしたところをあそこの駄犬に連れて来られたんだよね。」
おもむろにチッ、と舌打ちすると目が合った黄瀬がびく!と反応する。
「リード離して逃げてきたみたいだから、取り合えず首輪引っ付かんで電車に放り込んでくる。」
「はい。」
じゃあね、と今度こそ体育館を後にして、女子生徒に囲まれる前にと後輩を急き立てた。

翌日。
「#name1#さん。」
漫画で例えるなら背後にドン!って感じの効果音が付きそうな。紙パックの紅茶をズルズル飲みながら少し身体を引く。相田リコ。名前だけは知っている存在。きっと相田さんにとってもそう。テストで上位陣の常連、お互いに。
「中学の時バスケ部のマネージャーしてたのよね?」
黒子くんに聞いたの、と。
「してたけど、大して何もしてなかったよ。後輩のマネージャーの方がよっぽど凄かったし。」
ちらつく桃色の髪。今は桐皇だっけ。敵に回ると厄介さん。…ってそれは『キセキの世代』全員か。飲み終えた紙パックを綺麗に広げて平らにしていく。
「ぜひ誠凛バスケ部マネージャーになって欲しいの!」
「申し訳ないけど、燃え尽きちゃったんだよねー、中学で。」
へらりと笑う。色んな意味でお腹いっぱい、今なお消化不良中。なんて、言わないけど。あの日以来、弟とのじゃれあい程度にしかバスケには触れてない。
『…こんな事のために…こんな事のために教えたんじゃないのに……!』
震える声、熱くなる瞼、握り締めた拳。爪が食い込んで皮膚をぶつりと刺さる感触がした。目の前が真っ暗になったあの日。無力な自分。守れなかった約束。
「だから、ごめんなさい。」

「断られちゃったわー。」
残念、と腕を組む。
「帝光中のマネージャーねえ…。」
「#name1#先輩ですか?」
「うおっ!?」
「ビックリした〜!」

「」「」「」「」「」「」「」「」
「」「」「」「」「」「」「」「」「」
黒子は静かに言葉を紡いだ。
「凄いですよ、あの人は。」

同時刻、海常高校。
誠凛にフライングした罰として倍のメニューをこなし終えた黄瀬の頭にタオルがかけられる。
「どーもっス。」
「オウ。そーいえば…電話に出た相手、お前のか…彼女か何かか?」
「ちげーっス。中学ん時にマネージャーしてた先輩っスよ。」
「帝光のか?」
「っス。」
「へぇ…あの帝光のマネージャーだ。タダもんじゃねえだろーな。」
そりゃあそうっスよと内心思う。オレをバスケの道に導いたヒト。

「ボクたち」「オレら」

「『キセキの世代』を育てた人ですから。」
「『キセキの世代』を育てた人っスから。」

by ***


「ロマーリオさん、こんにちは。」
「おお、里砂嬢!」
ややゆったりした群青色のニットにウエストがリボン結びになっている灰色のテーパードパンツ。片側の髪を耳にかけていることで、黒のピアリングが覗く。
「また美人になったんじゃないか?」
「そう言って下さるのはロマーリオさんくらいですよ。ありがとうございます。」
そう言って目を細める姿に、大人になったもんだとしみじみ思う。いや、この子に限っては昔から落ち着いていたか。
沢田里砂。その名前をマフィア界では知らないヤツはいないだろう。
「ディーノさん、おいでますか?」
「ボスなら部屋にいるぜ。案内しよう。」
「庭園、綺麗な青薔薇が咲いていましたね。」
「ああ、最近植えたヤツだ。ボスが気に入ってな。ーーボス、入るぜ。」

「ディーノさん、うちのボスからです。」
ああ、と
「元気そうで何よりだ。」
「お互い様です。」

「『神の祝福』『不可能を成し遂げる』」
by ***

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指定されたカフェに向かうと、先客があった。向かい側の椅子を引きつつ、視線を合わせる。
「お待たせしました。」
「ーーいいえ?何か飲む?」
右手の甲に顎を乗せていた女性は置いてあったメニューを左手で開いて私に向ける。
「ありがとうございます。あ、すみません、アールグレイをストレートで。」
ボーイさんはにこりと笑むと店内に姿を消した。椅子に座り、再度視線を上げるとばちりと合う。
「お目に適いましたか?」
微笑みかけると、ピンクのルージュで象られた綺麗な唇を動かす。
「#name1##name2#。ボンゴレ10代目の縁者で深海の指輪の守護者。」
雑踏、車のエンジン、話し声。生まれた土地ではないけど、間違いなく愛すべき土地だ。
「ボンゴレの相談役、雲の守護者雲雀恭弥の腹心の部下…、」
つらつらと挙げられた口上に苦笑いする。
「噂には聞いていたけれど、若いわね。」
「失望しました?」
私の言葉に少し目を丸くすると女性はくすりと笑ってブロンドの髪を揺らした。
「ーーいいえ、会ってみたかったの。」